2016年08月

  大渕弁護士は、着手金が17万8500円、事件終了まで顧問料が月額2万1000円、成功報酬が成果の10%で契約したのですが、依頼者は着手金が用意できませんでした。

 そこで、まず法テラスの代理援助制度を利用して支給された12万5000円を大渕弁護士に支払い、更に不足分を依頼者から大渕弁護士に支払われたというものです。


  今回は、法テラスの制度を利用した場合には、本来認められないはずの、直接の依頼者からの着手金等を受領したと云う点は、除斥期間(時効のようなものです)が経過しているということで判断の対象にはなりませんでした。

 今回問題にされたのは、不当に受領した着手金や顧問料の返還請求を拒否したという点だけです。


 法テラスの代理援助制度がなかったときには、弁護士費用を用意できない人は、原則的に弁護士を依頼することは出来ませんでした(法律扶助という制度がありましたが、要件が厳しいものでした)。

  法テラスのおかげで、まとまった弁護士費用が用意できなくても、一旦法テラスが弁護士費用を立て替えてくれて、依頼者は月々5000円程度ずつ法テラスに返していけば良いと云うことで、弁護士に依頼することが、大変楽になりました。

 その上、生活保護受給者は、原則、返済無用です。


  問題なのは、法テラスの立替基準による金額が、弁護士が直接受任する場合の半分から3分の1にしかないと云うこと、更に、審査が非常に時間がかかるということです。

 特に私の地域では申請から扶助決定まで1年以上かかったケースもあります。

 私も、以前は、お金のない相談者に対しては、持ち込み事件として法テラスを利用していましたが、今は法テラスを紹介しますが、その場合には、私は、受任をお断りしています。


  大渕弁護士としては、当初、依頼者と契約した金額を受け取っただけで、依頼者にとって何も損なことではない、という意識だったのでしょう。

 法テラスが出来てから4年くらいしか経っていなかったと云うことで、制度そのものも周知していなかったのかもしれませんが、知らなかったというなら同様なことが他にもなかったか心配になってしまいます。


 ちなみに、マスコミで大渕弁護士を擁護している橋下弁護士は、利害関係なくコメントしているのかと思っていたのですが、懲戒事件の大渕弁護士の代理人だったと云うことです。

  処分の重さについては、最初報道を見たときの印象としては重いと思いましたが、今はあり得るかもしれないという感想です。

 障害者殺傷事件が起きた相模原市の事件に於いて、「津久井やまゆり園」の責任については、全く報道されていませんが、何らの責任もないのでしょうか。

  犯人との関係では、施設側も勿論、被害者であることは間違いありませんが、被害に遭った入居者との関係では、責任がないとは言い切れません。

  というのは、「津久井やまゆり園」は入居者の生命身体の安全を守ることを、第一義的な目的とする施設ではありませんが、副次的には、入居者の生命身体の安全に配慮しこれを保持するべき契約上の責任があることは間違いありません。

  入居に際して何らかの免責特約をしているかもしれませんが、免責特約があったとしても、故意又は重過失についての免責特約は仮にしても無効でしょうし、そもそも免責特約の効力も問題でしょう。

 今回の犯行については、かなり前から犯人自ら語っており、施設側もこれをよく知っていたものです。だから、施設側は雇用していた犯人を離職させ、本件犯行の前には、新たに防犯カメラを追加設置したとのことです。

 本件犯人のように、犯行を事前に口にする者がいたとしても、必ずしも実行されると云うことはありません。むしろ、このような凄惨名犯行は極めてまれなのでしょう。

  しかし、全く予想できなかったと云うことではありません。施設側もあり得ないとは考えていなかったからこそ、防犯カメラを追加設置したのでしょう。

 結局は、危険性を予知していながら、対応がぬるかったと云うことになるのだと思います。施設の監督官署、警察、措置入院をしまた大麻反応が出ながらわずか2週間で退院させた病院なども法的責任がないとは言い切れないと思います。

 ただ、入居者側は普段から負い目を持っていたことも予測されますし、なくなった方の遺族としては、死んだ人間が帰ってくるわけではないという思いもあり、施設側の責任追及がなされるかどうかは、責任追及に大義名分が認められるかどうかにかかってくるということでしょうか。

 このような悲惨な事件を未然に防止する仕組みが、必要ではないでしょうか。

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