2012年02月

   最近の事件(民事)はというと、突出していた過払い金返還請求が減ってきたものの、あるところにはあるようで、その他に古今東西に普遍的な家事事件と損害賠償事件とを含めてがビッグスリーです。が、このところ労働事件の相談が増えています。ただ、相談が多い割に仕事にならないのは、弁護士さんに頼む程の金額ではないことが多いからか。労働事件といえば、労働審判です。3回の期日で解決、調停有り、審判有り、駄目ならさっさと打ち切りもあるといった、他の手続にはないダイナミクスが売りです。一方的に期日を決めてその変更も原則認めないという荒っぽさがまた魅力でしょう。誰に聞いても概ね好評です(私も同感です)。みそは、申立人、相手方をまとめて入室させて、同時にそれぞれから聞けば、大体、本当のことが分かってしまうということです。力のある審判官にかかれば安い速い旨いの良いことずくめ。
 ところで、この方式を他の事件に広げられないでしょうか?家事事件に応用すれば大変なことになってしまいそうです。DV事案でなくても相手の顔も見たくないという野が普通ですし、代理人も結構危険かも知れません。感情的になる事件は出来ません。建築紛争、医療過誤、交通事故なども考えられますが、結局は、3回程度の期日で解決するには、高額な事件は無理なんでしょう。せいぜい100万円程度の金額で、感情的になりにくく定型的な処理が可能と言うことになると、労働事件に極まるということでしょうか。

   むかし市民運動をしたことがあります。幼稚園のPTA会長などやっていた立場上、小学校や幼稚園のすぐ隣に産廃処理場をつくるなんてことは誰が考えてもおかしい、10人中10人が間違いだと言うはずだと反対したら、PTA会長をクビになってしまいました(市が産廃推進でした)が、産廃計画は1年後に白紙撤回となりました。その後、何のことだったか忘れてしまいましたが、10人中8人は反対するはずなので力を貸してほしいとの依頼を断わりました。10人中8人が賛成することを正しいとするのは政治的判断であり、それをするのは政治活動であって市民運動ではないと思いました。全員がそうだというのと多数決で決めるのとでは全くレベルが違うことです。
  死刑も多数決で決めるようになりましたか。死刑も特別な刑罰ではなくなったわけです。最高裁は、「生命は尊貴である。一人の生命は全地球より重い」と判示した大法廷の判例を小法廷で変更するつもりか?もっとも、構成員の質が均一でない裁判員裁判の下では死刑も多数決が当たり前なんでしょう。

 1週間前の2月10日に日弁連(日本弁護士連合会)の会長選挙と、兵庫県弁護士会の会長・副会長・常議員等の選挙がありましたが、日弁連の会長選挙は決着がつかずに来月に決選投票となりましし、兵庫県弁護士会の選挙は副会長が定員4名のところ3名しか立候補せず、後1名再度募集と言うことになりました。
 いずれも、非常に珍しい現象です。日弁連の会長選挙は通常東京・大阪といった大票田の支持をうけた候補者が当選するのですが、今回(実は2年前にも同様のことがおこっています)は、宇都宮先生という全国的に知名度の高い候補者が地方の弁護士会で抜群の支持を得たため決着がつかなかったのが原因です。ある意味特殊なケースといって良いかもしれません。
 しかし、兵庫県弁護士会の副会長の定員割れというのは、同じく珍しい現象とはいっても、事態は深刻です。もともと、弁護士会の役員は無報酬でボランティアなのですが、兵庫県弁護士会会長(よその弁護士会の会長も同じです)というのは、あとで勲4等がもらえ(いらんという会長もあるとは思いますが)それなりに名誉が与えられますし、弁護士会のトップとしての達成感があるのですが、副会長というのは全くの「縁の下の力持ち」なのです。ボランティア精神が支えでやってきたのですが、一年間、かなりの時間をとられるため、自分の事務所の仕事はなかなか時間がとれなくなってしまいます。そこで、経済的に余力がないと出来ないということですが、、昨今の弁護士の大幅増員で、各弁護士が経済的にまいっていると云うことの表れではないかと思います。このままで良いのかは非常に、疑問です。

今日、無銭飲食の裁判の判決がありました。ファミリーレストランで2394円の無銭飲食をした事件で、裁判官は「それなりに多額の」無銭飲食だとして懲役1年の実刑判決を言い渡しました。ちなみに検察官は、被害結果(2394円)は「この種事犯としては比較的大きい」として懲役1年6月の求刑でした。これはふつうの量刑相場です。
 3年前に、裁判員裁判が導入されてから、一般社会人の常識という言葉で、それ以前と比較して、刑罰が非常に重くなりました。被害者1人の殺人の判決は平均懲役10年だったのが、懲役15~16年になりました。その根拠は、一般社会常識に照らして軽すぎると言うことです。しかし、一般社会常識は、刑罰を重罰化する方向にだけ使われています。1人殺して懲役10年が軽すぎるというのが社会常識なら、2394円の無銭飲食で懲役1年6月は、信じられないほど重すぎとは思いませんか。今の、刑事裁判は、裁判員裁判だけ常識にかなった(重い)量刑が必要だが、それ以外の裁判では社会的に非常識な量刑でいいというのが実際です(怒!)。

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